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最高のチームワーク

魚と白ワインの絶妙なコンビネーション。

最後に信じるのは自分の舌。でも「魚には白ワイン」という言い古されたルールには見逃してはならない真実があります。

魚料理には白を合わせるというのがワイン界における昔からの黄金ルール。ジェームズ・ボンドは相手が舌平目のグリルに赤ワインのキャンティをオーダーしたことでソ連のスパイであることを見破りました。でも味の世界はそんなに単純ではありません。黄金ルールや固定観念は一度は疑ってみるのが健全な姿勢。味の好みは人それぞれであり、同じ人でも日や時間によって変わります。

さらに、一口に「魚料理」と言ってもそのバラエティは白ワインに勝るとも劣りません。刺身のような生から、皮だけ炙ったり、完全に火を通したり、火の通し方も煮る、蒸す、焼く、揚げるなどさまざま。1匹そのまま供する場合もあれば切り身にして使うことも。魚の種類にしても白身、赤身、青魚など多種多様。一皿一皿味が異なります。ソースも千差万別。溶かしバターを添えるだけのシンプルなものから、ハーブ、ライム、トマト、パプリカ、玉ねぎ、ベーコン、クリーム、レモングラス、しょうが、白ワインなどのソースまで、同じ魚でも味わいを一変させます。このように繊細な魚料理にワインを合わせる時に注意したいのは、ワインが主張しすぎないこと。料理の味をしっかりと見極めてからワインを選ぶようにしましょう。

舌をくすぐる甘み

そのワインには、酸味、甘み、フルーティー、ミネラルなどの味の要素と、ハーブ、花、果実、野菜などの香りの要素がどれも少しずつ含まれており、さまざまな風味を作り上げています。さらに「バリック」と呼ばれる小さい木樽で長期間熟成させると、苦味成分であるタンニンが加わり、バニラやウッド、時には古いシガーケースの香りがするようになります。この風味は人によって好き嫌いが分かれます。

白ワインの風味を決める最大の要因は甘みと酸味のバランスでしょう。甘みは風味を際立たせて舌をくすぐり、酸味は活力と爽やかさを与えます。ソースに少量の砂糖やレモン汁を加えるのと同じ。甘みが強いワインは苦味のある料理の味をまろやかにし、酸味に傾いたワインは甘い味付けをよりシャープに感じさせます。つまり料理と同等またはそれ以上の甘みを持つワインを選ぶことが大切。酸味の強いソースに酸味の強いワインを合わせると苦味が増し、タンニンが強すぎるとどんなにスパイシーな料理でも風味が損なわれます。ワインの温度によっても甘みや酸味の感じ方が変わります。冷やすと爽やかでフルーティーになるのに対し、温度が高すぎると鈍重で鬱陶しい印象になります。

具体的な組み合わせを見ていきましょう。魚には澱粉質と糖質が含まれているため、蒸し煮、フライ、グリルにすると甘みが加わります。これには非常に辛口なワインよりも、ピノ・グリ、ミュラー・トゥルガウ、シャルドネ、ヴェルディッキオなど、若干残糖が感じられるボディのしっかりした白ワインがぴったり。リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、シルヴァーナーはおすすめできません。逆に、ザンクト・ラウレントやボジョレーなど若くてフルーティーな赤ワインも合います。

鯛のハーブソースにはイタリアのマルケ州で生産されるヴェルディッキオがおすすめ。オーブンで焼いた鯛に白ワインとパセリを使った鮮烈なハーブソースとレモンスライスを添えた一皿で、エレガントなヴェルディッキオのわずかな苦味と若干の酸味との相性が抜群。また独特のフルーティーさがさらに味わいを広げます。

最適な酸味レベルを見極める

生、蒸し料理、ポーチドフィッシュ(軽めのクリーミーソース添えが一般的)の場合、魚の繊細な味わいを消してしまわないよう、酸味の弱いワインを選びましょう。リースリング・カビネット、リースリング・シュペトレーゼ、ピノ・ブラン、ケルナー、ボルドーの白、ヴィーニョヴェルデ、ショイレーベ、ヴィオニエ、ソアーヴェなどがおすすめです。あるいは、甘い香りのないロゼはいかがですか?

トマト、パプリカ、レンズ豆、ベーコン、チリ、しょうが、ガーリックなどを使った味の強い魚料理には、酸味が強くフルーティーな白ワインが必要です。辛口のリースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、グリューナー・ヴェルトリーナー、シルヴァーナー、シュナン・ブランが良いでしょう。赤もおすすめ。フルーティーで酸味があり、タンニンのないシュペートブルグンダー、ドルンフェルダー、グルナッシュ、メルロー、シラー、サンジョヴェーゼなどをお試しください。もちろんキャンティもOK。敵のスパイと間違われることもありません。

筆者:ライナー・マイヤー (Rainer Meier)
画像:© Getty Images/ © iStockphoto